産業機器ソリューション導入事例

宇宙実験サンプル打上げ・回収用真空二重断熱容器

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JAXAの宇宙実験サンプルの地上とISSの往復輸送用の再使用型の真空断熱容器。
SpaceX社のドラゴン宇宙船に搭載され、日本独自のISSへの保冷輸送手段として利用。

宇宙用真空断熱容器の開発背景|JAXAと再び挑んだ温度制御ミッション

当社は2018年11月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同開発により、日本初のチャレンジであった「国際宇宙ステーション(ISS)から実験試料を地球へと回収する技術実証」に対応した宇宙輸送用真空二重断熱容器の開発に成功しました。この断熱容器は、宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機の小型回収カプセルに搭載され、4℃±2℃の温度を4日間以上維持しつつ、最大40Gの着水衝撃に耐える構造を求められました。

当社が創業100年にわたり培ってきた保冷技術で、この厳しい条件をクリア。本容器は技術実証でその性能を証明し、次なる開発フェーズへと進展しました。

続く第二フェーズでは、さらなる技術的挑戦として、国際宇宙ステーション(ISS)との往復輸送中におけるタンパク質サンプルの20℃±2℃での12日間以上の温度維持という、より高度な温度制御ミッションが課され、当社は新たな真空二重断熱容器の開発を開始しました。

宇宙用真空断熱容器に求められた新たな課題

国際宇宙ステーション(ISS)との往復輸送に使用する真空二重断熱容器の開発にあたり、前回の技術成果を上回る高度な温度制御性能、軽量・小型設計、および再利用性が新たな開発要件として求められました。

■第二フェーズで設定された3つの要求事項:
・厳格なまでの保冷温度管理
打ち上げからISSまでの実験試料の温度維持のため、保冷剤を同梱することで20度±2度を12日間以上保つ。ISSから地上に回収するまでの期間も、20度±2度で7.5日以上保つ。

・大幅な軽量化・サイズダウン
真空断熱技術による高性能な保冷機能を保ちながら、容器の質量を保冷剤を含んだ状態で4.7kg以下に、容器サイズをコンパクトに製作する。

・複数回利用に耐え得る設計
長期的な利用を想定し、1回限りの使い切りではなく、3年以上または6回以上の再利用を可能にする。

課題に対するソリューション

JAXAおよび株式会社テクノソルバとの協力により、長時間にわたって温度を安定保持できる宇宙輸送用真空断熱容器の設計・改良を進めました。
その結果、複数回の温度実験を経て、20±2℃の温度を15日と7時間にわたり維持することに成功。

さらに、合計質量を目標の4.7kgから大幅に下回る約2.9kgまで軽量・コンパクト化し、宇宙輸送効率の向上にも貢献しました。
また、本容器は、複数回利用を可能にするために、真空保持設計や真空度を維持するための部品について、民生設計より高いレベルでの設計を行いました。

▼2018年納品の真空二重断熱容器NPL-A100(右)との比較

(左)NPS-A100
・合計質量 約2.9kg
・外径 約130mm

(右)NPL-A100
・合計質量 約10kg
・外径 約290mm

宇宙実験を支えた真空断熱容器、ISSから無事帰還

2021年12月、SpaceXのドラゴン補給船運用24号機により、タンパク質結晶の宇宙実験用試料を収納した真空断熱容器が国際宇宙ステーション(ISS)へ打ち上げられました。約1カ月の実験期間を経て、容器は2022年1月に地球へ帰還。往復ともに内部温度は規定範囲で安定しており、現在も地球と宇宙の物資輸送において繰り返し利用可能な保冷容器として活用されています。

ISSに接近するドラゴン補給船運用24号機( 画像提供:JAXA/NASA)
ISSの「ハーモニー」(第2結合部)にドッキングしたドラゴン補給船運用24号機( 画像提供:JAXA/NASA)

持続可能な未来に向けた真空断熱技術の挑戦

当社は真空断熱ボトルにおいて、2020年より「NO・紛争鉱物」「NO・フッ素コート」「NO・丸投げ生産」「NO・プラスチックごみ」の”4つの約束”を掲げ、地球の未来のために、人権・健康・環境の社会課題にチャレンジしております。また、持続可能な社会の実現を目指し、 2021年7月より使用済みステンレス製ボトル(水筒)の回収と再資源化の取り組みをスタートさせています。
本容器に関しても、宇宙分野でのサステナブルな取り組みに貢献したいという想いから、複数回利用に耐えうる設計開発に携わりました。今後も当社の強みである真空断熱技術を向上させ、持続可能な社会の実現にむけて努力してまいります。

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