産業機器ソリューション導入事例

宇宙技術×真空断熱技術の融合-JAXAベンチャーとの業務提携【超高性能断熱保冷容器の開発】

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タイガー魔法瓶が業務提携しているJAXAベンチャー「株式会社ツインカプセラ」が宇宙開発で獲得した技術を活用した次世代断熱保冷容器を開発。バイオメディカル物流における温度管理の課題解決を目指す。

開発背景 – 宇宙技術の地上応用・社会実装

 近年、宇宙開発で培われた先端技術の民生分野への応用が注目されています。特に、宇宙という極限環境における用途で開発された高い熱制御技術は、地上でも、高精度・高性能な温度管理が求められる分野での活用において、大きな可能性を秘めています。

タイガー魔法瓶の技術革新への取り組み
 100年以上にわたり真空断熱技術を追求してきたタイガー魔法瓶は、更なる技術革新を目指し、異業種・異分野との協業による新たな価値創造に挑戦しています。宇宙という最先端技術が必要とされる分野での技術開発への挑戦により、従来の真空断熱技術の限界を超えた製品開発を目指しています。

『ツインカプセラ×タイガー魔法瓶 宇宙技術の地上応用へ』
 タイガー魔法瓶が長年培ってきた真空断熱技術とJAXAが宇宙開発で培ってきた宇宙機の熱制御や設計のノウハウを組み合わせることで、2018年11月、JAXAは、独自の再突入カプセルにより国際宇宙ステーションから宇宙実験サンプル(高品質タンパク質結晶等)を保冷状態で地上に回収するミッションに日本で初めて成功。このとき獲得した再突入カプセル用断熱保冷容器の技術を地上用途で発展させ事業化すべく、回収カプセル開発プロジェクトのメンバーで断熱保冷容器開発を主導したJAXAの宮崎和宏氏、畠中龍太氏がJAXAベンチャー・(株)ツインカプセラを設立。
 タイガー魔法瓶は、宇宙用真空断熱容器の開発で培った信頼と技術基盤をもとに、2021年に、ツインカプセラとの同技術の社会実装に向けた業務提携を開始しました。

課題

医薬品等の輸送に使用されている従来の保冷ボックスは、以下のような課題を抱えています。

『温度逸脱のリスク』
 バイオメディカル系分野では、検体、ワクチン、細胞、医薬品、生体組織等の輸送において、適切な温度の維持・管理が必要とされています。市場には様々な保冷コンテナや保冷輸送サービスが存在していますが、輸送中の温度逸脱はしばしば発生しています。温度逸脱が発生すると要保冷物の廃棄などの経済的な損害が発生するため、確実な温度維持を行うことが非常に重要です。

『高額な輸送コスト』
 現状、少量のものをコンパクトに確実かつ低コストで保冷輸送するということは困難です。従来は、数本の検体等の少量の保冷輸送であっても、十分な保冷期間を確保するために大型の保冷ボックスで大量の保冷剤やドライアイスを使用する必要があり、特に海外など、遠方への輸送においては高額な輸送コストかかっています。

課題解決 – バイオメディカル輸送用 ”超”断熱保冷容器「バンブーシェルター」

 このような課題解決のために、ツインカプセラ社とタイガー魔法瓶が技術提携により開発したのが”超”断熱保冷容器「バンブーシェルター(BAMBOO SHELLter)」です。竹のようなスリムな形状で、外部の熱から強固に保護する「小型」「超高性能」な保冷容器(体積2L以下、-70℃以下を7日以上維持)で、少量の検体や細胞等をコンパクトにかつ確実に保冷輸送できるという新たな価値の提供により、医療分野等での課題解決に貢献します。

新たなソリューションの提供』

 3つの製品ラインアップと多様な利用形態により、医療や創薬など分野で、基礎研究、臨床研究、臨床等の各フェーズにおいて、従来は困難だった、温度逸脱のない「確実な保冷輸送」と「低コストでの保冷輸送」を両立する新たなソリューションを提供します。

従来の保冷ボックスにはない様々な利点』

 最も小型のシングル断熱Sサイズは、容器の体積が約1.3L、重量が約1kgであり、宅配便で最も安価な60サイズで梱包できます。これにより、大型の保冷ボックスに対して大幅な輸送コストの削減が期待できます。
 断熱保冷容器内で温度維持が完結するため、常温宅配便(特別な保冷設備は不要)での保冷輸送が可能であり、また、手提げカバンでも持ち運べるサイズ・重量のため、出張時のハンドキャリーや往診時の一時保管などにも利用可能です。
 さらには、バッテリーを使用していないため、航空輸送にも対応可能であるなど、現在広く使用されているの一般的な保冷ホックスと比べ、様々な利点を有しています。

卓越した温度維持性能』
 -70℃以下、-20℃、-10℃、4℃、20℃、37℃など、バイオメディカル系の各分野でニーズの高い温度帯に対応できることに加え、各温度帯において、シングル断熱Sサイズの容器では約3日以上、ダブル断熱では約7日以上の温度維持が可能です。宇宙開発で培った技術で開発した高性能な真空断熱により、外部環境の熱の影響を極小化し、長期間安定した保冷性能を発揮します。これにより、血液・細胞・生体組織等、温度変化にセンシティブなバイオメディカル系の要保冷物が、輸送中の温度逸脱によりダメージを受けるリスクを低減します。

断熱保冷容器の将来展望と多分野への展開

『真空断熱容器の将来展望と多分野への展開』

バンブーシェルターが有する革新的な機能や性能は、以下に示すように、バイオメディカル系の研究機関や医療機関などにおける様々な用途・シーンで広く活用でされ得るものであり、社会の温度管理インフラ、特に保冷物流サービスの常識を変える可能性を秘めています。

基礎・臨床研究(研究機関・バイオベンチャー等)
共同研究先との間の検体や試薬用の通い箱
医師主導(多施設共同)研究での検体収集

臨床検査(検査受託事業者等)
医療機関から検査センターへの検体輸送
分散型臨床試験での遠方被験者の検体収集

臨床試験(製薬会社・CRO等)
治験薬剤の医療機関への輸送
国際治験等における検体収集

医薬品の供給(医薬品卸等)
高額なスペシャリティ医薬品の国際輸送
少量のワクチン等の少量・小分け輸送

生体組織の保存・供給(バイオバンク等)
医療機関からバイオバンクへの輸送
バイオバンクから医療・研究機関への輸送

再生医療研究(研究機関・バイオベンチャー等)
細胞医薬品研究・開発における各種輸送
自家細胞の海外加工施設との往復輸送

訪問診療・看護(訪問診療センター等)
訪問先で採取した検体の一時保管・発送
訪問診療先で使用する医薬品の持ち運び

離島や災害地への医療サービス提供
僻地における医薬品輸送・検体回収
重量制約が厳しいドローンによる輸送

JAXAベンチャー「株式会社ツインカプセラ」について

 株式会社ツインカプセラは、「再突入カプセルの“超”断熱保冷技術を 地上へ 社会へ」をスローガンに掲げ、JAXAのHTV搭載小型回収カプセルの断熱保冷容器技術の社会実装を目指すJAXAベンチャーです。小型・超高性能の保冷コンテナの開発・供給により、検体、ワクチン、医薬品、生体組織等の個別化保冷輸送を可能とし、臨床検査、癌等の早期スクリーニング、分散型臨床試験(DCT)等、バイオメディカル分野の輸送において、新たなサービスの創出を目指しています。

株式会社ツインカプセラ公式サイト:https://twincapsula.co.jp/

関連リンク

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タイガー魔法瓶のコアコンピタンスである「真空断熱技術」とは?

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